法政大学大学院 創造産業研究所 (研究は終了しています)

研究員等の職は、設立当時のもの

研究代表者 大学院政策創造研究科教授 増淵 敏之
主たる研究分野 地域再生に関わる創造産業
研究概要 国の産業政策の一環としての創造産業(Creative Industry)に力点が置かれるようになった。イギリスの「クール・ブリタニア」に端を発し、その産業的な核である コンテンツが注目され始め、それをJ.ナイの提唱した「ソフトパワー」、R.フロリダの提唱した「クリエイティブクラス」などの議論が補完してきたといえよう。
イギリス1990年以降、文化的な人的財を創出し、音楽、ファッション、出版、広告、デザイン、建築、美術、ゲーム、映画などの領域で、圧倒的なアメリカ文化に対して イギリス独自の自己主張をするようになった。
1997年にT.ブレアが首相に就任して以降、「クール・ブリタニア」のフレーズは彼の新鮮なイメージとともに広がった。彼は国の主要産業として国家ブランド戦略に 打って出たのだといえよう。
若い才能や活気に溢れる多様な文化や未来へのアイディアを生み出す社会を「クール・ブリタニア」と規定し、その文化を生み出す担い手やそれを広めるメディアなどを 創造産業とし、雇用創出、外貨獲得、観光誘致のために、国家的なブランド形成の最重要産業として育成することとした。
つまり創造産業によってイギリスから先端的文化やポップ文化、そしてその周辺の研究などを発信することによって「クール・ブリタニア」を世界的に浸透させることが 重要であり、ブランド形成によって多くの国から経済投資、観光客や文化人の移住を誘致し、創造産業はもとより関連する観光、サービス、商工業などの雇用創出も図り、 イギリスをより多様な文化が共生する活力のある社会を形成することによって景気高揚、失業率低下、高齢化防止を図ろうとした。わが国も2004年5月に政府知的財産戦略本部が「コンテンツビジネス振興政策~ソフトパワー時代の国家戦略」を発表、国会では議員立法で「コンテンツの創造、 保護及び活用の促進に関する法律」が成立した。コンテンツビジネスを国家戦略の柱としたい考えだ。
また近年においては国家的レベルから地域、都市再生においてコンテンツの重要性が述べられるようにもなってきている。いわゆる創造都市論がその理論的背景にある。
しかし文化芸術振興とコンテンツの産業化には大きな隔たりがあり、産業そのものが東京への集積偏重を見せている現状からすれば地域へのノウハウ移転が急務であろう。
たとえば大阪市、横浜市、札幌市、川崎市などの政令市から金沢市、浜松市などがこの創造都市論の文脈で都市再生を標榜している。しかしノウハウなしに計画だけが先行しているような 印象を受ける。
ここに更なる議論や研究の必要性が実践を背景にした形で望まれているに違いない。そしてそれを前提にしての産業化の可能性を綿密に、丁寧に見出していかなければならないだろう。
本研究所ではそういった状況を基に地域との研究的アライアンスを射程に入れて、外部資金の取り込みを惹起し、研究機関としての貢献を行っていきたいという意図から設立を考えたものである。
当然、まだこの領域は研究蓄積も浅く、地域での成功事例の列挙に終始しているという現状も否めない。つまり主体的な実践が伴ってこその研究成果が必要な領域といえるだろう。
具体的にいえばビジネス構築、展開と並行しての研究作業を行っていくという形になることから、従来の特定課題研究所よりは、よりシンクタンク的なニュアンスが 大きくなっていくに違いない。
またそのために研究員も専任の教員のみならず実践で活躍しているメンバーを活用していく。政策提言においても机上の空論を避けてより現実的なものを作成し、地域との問題解決のスキームを 信頼性も基付いたものにしていきたい。
確かにデジタル化が普及する中での著作権に関する議論も不可欠になってきているが、本研究所の課題としてはその点に必要以上に拘泥せずに、地域における創造産業の新たなビジネススキームも 見出していきたい。
例えば創造産業の個々の領域間でのコンバージェンス、コンテンツと観光、サービス、教育などの関連業種との連携による新たなモデル化なども視野に入れての研究を行っていきたい。
他大学でも創造産業に関しては様々な研究が進む中で、独自性を出すために前掲したような実務経験者を客員研究員に招くことで、研究と実務の双方を並行して進捗させる形を狙っていく。
もちろん研究費を外部から確保するためにもその点が極めて重要であり、研究対象を地域とすれば尚更、具体的なビジネス化の提案は盛り込んでいかなければならない。また地域での活動を より効果的なものにするために地域に立脚する他大学との共同研究も射程に入れていく。
また将来的には大学院政策創造研究科のカリキュラムのひとつの特色として、創造産業政策関連のカリキュラムの設置も含んでの研究所設立としたい。時代的な変化の中で今後は適宜、 カリキュラムの見直し、修正も必要になっていく。本研究所はそのための基盤形成としての役割も担っていくという側面も持っている。つまり研究所設立から研究期間を経て、新規性のある、 魅力的なカリキュラムを具現化に持っていくことが大学院の学生のニーズにこたえることになっていくに違いない。
今後の国の産業的 将来像を描いていくために、創造産業に関する議論、研究は不可避のものであり、この研究所設置を法政大学のその領域でのアプローチの嚆矢としたい。
研究員
岡本 義行 大学院政策創造研究科教授
客員研究員
藤井 克仁 有限会社NEW STANDARD代表取締役
岩本 洋一 亜細亜大学短期大学部非常勤講師
設置期間 2008年7月30日~2011年7月29日
設置場所 大学院政策創造研究科 増淵敏之研究室